『The Cost Of My Freedom』/Ken Yokoyama

The Cost Of My Freedom

The Cost Of My Freedom

横山健のソロアルバムをいまさらながらに聴いてみた。

横山健といえばハイスタンダードであり、ハイスタンダードと言えば僕らの世代では青春のバイブルと言うべきバンドであり、ハイスタを聴いて大人と子どもの境目をふらりふらりとしながら生きていたものである。

今ではテレビでもラジオでもガンガンかかり、「パンク」として紹介されている日本の「エモコア」バンドたち。彼らの音に揺れてモッシュするキッズたち。彼らはみんなといっしょであることがあたりまえの快楽として今を生きている。

でもさあ。それって「パンク」なの?みんなが聴いている音楽に、みんなが同じような反応を示し、みんな笑顔でニコニコしてやがるよ。

ハイスタは確かに道を作った。
彼らの鳴らす音は、とてもキャッチーで、ラウドで、泣けた。日本で「パンク」というとっつきにくい音楽を、「誰もが鳴らしてもいい音」として確立した。彼らが作った道は、完璧と言えるほど舗装された道だ。誰もがその後を、たやすく歩んでいくことができた。

誰もやらない音楽をやりたかった彼らは、誰でもできる音楽を作り出した。おかげで世の中には、腐るほど「パンク」バンドが誕生した。


自由への代償。
彼らがやりたかったことに対する対価として、横山健は孤独を支払った。彼らが独自の音楽を求めれば求めるほど、まわりは彼らを放っておかない。彼らがすばらしい音を鳴らせば鳴らすほど、彼らのまわりには彼らのコピーがあふれてくる。やればやるほど彼らの独自の音楽は、「みんなの」音楽へと変わっていく。その「成功」を、「孤独」と言わずに何と言おう?

原爆オナニーズBBQチキンズでの試み。そしてソロプロジェクト。横山健は、これからも「孤独」を支払い続けるのだろう。その過程において一度立ち止まり、そしてこれからもがむしゃらに走り続けることを再確認した本作は、これからの横山健の未来を明るく照らしているように思える。


評価
☆☆☆★★(#13 ばかり聴いてしまう今日この頃)