ワッツーシゾンビ "WE ARE THE WORLD !!!"

WE ARE THE WORLD!!!

WE ARE THE WORLD!!!

WE ARE THE WORLD!!! | 非連続小説『じゅげむの人間体験記』

同じ空気を吸う

90年代前半は、グランジオルタナの時代で、ブリットポップだった。でもぼくは、ニルヴァーナもブラーもオアシスも聞いていなかった。野球と勉強に明け暮れるごく普通の高校生だったぼくは、ロックを聴く暇もお金もなかった。でも、J−Pop(当時はこんな言葉、なかったような気がする)はつまらなかった。

ぼくは同時代の空気を吸い逃した。もう二度と、あの頃は帰ってこないと思う時は、いつもこんな時だ。


同時代。あれからぼくは、この空気を吸い逃すまいと、ずっと時代の空気を吸い続けている。もうすぐ30歳なのに、未だにロックを聴いている。同じ時代に生きて、同じ空気を吸って、同じ言葉を叫びたいのだ。ぼくはやり残してしまった。やり残した青春は、いくつになっても、亡霊のように背後からついてくる。


ワッツーシゾンビは、亡霊でも、生き霊でもない。生身の人間のバンドだ。谷村じゅげむと安里アンリがギターをかき鳴らす。三宅メグルがドラムを叩く。三作目のこのアルバムは、バンド崩壊の危機を乗り越えた2ndから、大きく飛躍した1枚だ。がっつりとロックを聴かせた前作から、もっと音楽的な幅を増している。どこかサイケデリックな要素も垣間見られる。彼らは、毎日欠かさず革命運動をやってるのだなあと思う。

ぼくは、ワッツーシゾンビと同じ空気を吸えて良かったと思っている。彼らはロックバンド。ぼくは、しがない小学校の教師。そんなぼくらが、同じ空気を吸っていることが、なんだかおもしろい。ぼくだって、毎日欠かさず革命運動やってるのだ。ただギターが弾けないだけで、代わりにチョークをにぎっている。手とズボンの太ももの辺りが白く汚れるが、こんな毎日も悪くない。