美しい国、日本になるためのロックの鳴らし方

僕は普段、iTunesiPodで音楽を聴いている。タグ情報は便利なので、逐一細かく入力しているのだが、僕は「グループ」の欄に「出身地」を入力して活用している。今日は何となくその出身地を整理してみたくなり、ちくちくとアーティストの出身地を洗っていった。

アメリカのアーティスト

英語版のWikipediaは、正にこの作業にうってつけで、少々マイナーなアーティストでもばっちり出身地(都市名、州)が分かる。さらに、どのアーティストにもミュージシャン用のテンプレートが使用されており、出身地の検索が実にスムーズに行える。万が一出身地の記載が無くても、アーティストのHPのリンクをたどれば、間違いなくそこに記されてある。少し話は逸れるが、アーティストのHPにリンクを張る代わりに、MySpaceにリンクを貼っている場合もある。しかも結構な数のアーティストにその傾向が顕著であった。

とにかく、僕のライブラリに納められているアメリカのアーティストの出身地は、ほぼ100%網羅できたのである。

日本のアーティスト

すっかり気をよくした僕は、前々からやっておきたかった、日本のアーティストの出身地の入力をすることにした。ところが、である。日本のWikipediaで調べても、出身地が分からないアーティストがほとんどなのだ。分かったのは、イースタン・ユースブラッドサースティ・ブッチャーズグレート・アドベンチャーナンバー・ガールくらい。テンプレも、使用されていたり、いなかったり。出身地の項目はあるものの、表記は「日本」のみ。リンクされているオフィシャルHPに行ってみても分からない。ググッても同じ。何も分からない。

辛うじてメンバーから分かるバンドもある。個人のプロフィールから類推して、どこの出身か分かるバンドもある。ユニコーンは、メンバー全員のプロフィールから広島出身だということが分かる。キリンジもそうだった。

でも、こんなのごく一部。結局何もわからないバンドの方が圧倒的に多い。なんで?なぜこんなに違うのか?

答えは簡単。ほとんどのバンドが東京で結成されたから。東京出身の者ももちろんいるのだけど、大学進学、または夢を追いかけて上京。このパターンが圧倒的に多いので、わざわざ明記する必要もないのだ。WikiやHPに書いていなければ、東京のバンドなのである。

中央集権国家、日本。経済、政治のみならず、文化、ましてやその末端のロックですらそうなのだから。

日本のロックとアメリカのロックの最大の違い

アメリカのバンドは、自らの地域に地盤を築く。レーベルも主要な都市には大抵あり、最も盛んな地域は西海岸、カリフォルニアあたり。レッチリメタリカガンズ...一方アンダーグランドではパンクがしっかりと根付いている。シアトルはグランジニルヴァーナ。世界最大の都市ニューヨークでは、大衆性とはかけ離れたアート志向。ベルベット・アンダーグラウンド、NYパンク、ラモーンズCGBG。近年はストロークスラプチャー近辺のアンダーグラウンドなロックも盛り返してきている。首都ワシントンDCは、意外にもハードコア。ホワイトハウスの目の前で「お前は嘘つきだ〜」なんて歌っているのだから面白い。

一方日本は東京一極集中。東京発の音を、地方は受けるだけ。地方からの発信権は皆無。夢見る地方の若者は東京に行き、東京発の音を再生産。地方は捨てられ、誰も出身地にはこだわらない。地方のシーンは東京の2軍に過ぎず、ただ飛び出すことを目指しているバンドマンたち。東京発、全国行きの歌は、まさに不特定多数へ向けられたメッセージ。当たり障りの無く、誰もが持ちうる感情を歌っていれば、売れる。いや、歌わなければ、売れない。不特定最大多数、顔の見えない誰かのための歌。これほどつまらないものはない。

レッチリを見なよ、あんだけビッグになったのに、未だに「カリフォルニア」のことばっかり歌ってるんだぜ?日本で誰が「Californication」を歌えるのか。地方を歌ってセルアウトしたのははなわぐらいじゃないのか。*1

愛国心ある若者を育てるために

とまあ、語りだせばきりがないほど地域性に富み、それぞれの地域が独立した音楽圏を形成するアメリカ。雑多な音楽シーンは、広大すぎる国土をものともせず、密度を濃くし続けている。歴史と伝統。地域愛。そんな音楽シーンで育った若者が、自ら生まれた地域を愛さないはずはないでしょう。

今の日本のロックシーンでは、日本を愛するどころか、生まれた地域すら愛せない若者を生み出すことは目に見えているのであります。ましてや、日本のロックをつまらないなどとほざき、海外の音楽しか聴かず、「やっぱ洋楽はええな〜」などとほざく非国民も少なからず存在しております。

愛国の作法を身につけるためにも、私めが是非とも提案したいことは、「日本のロックの地方分権」であります。各地方に個性的なロックシーンを形成することによって、若者(特にロックを愛するような粗暴で愛国心の無さそうな)の心をひきつけ、「地域を愛する心」を育て、愛国心を持つに至る基礎を築くことができるでしょう。

*1:その逆はくるり「東京」。相変わらずわけの分からない街です。