石川雅之「もやしもん」(1)〜(3)

もやしもん(3) (イブニングKC)

もやしもん(3) (イブニングKC)

「21世紀のユートピア
読後は菌についてのものすごい知識を得られる。1冊読むのにこんなにも時間がかかるとは、というぐらい情報量の多いマンガである。その割に読感はあっさり。読みやすい。おもしろい。

農大を舞台としたキャンパスライフを描いた物語である。変人教授に院生、先輩、同級生。挙句に主人公は「菌」を肉眼で見ることができる。ありえないこと尽くしのキャンパスライフ。でも、これって「動物のお医者さん」、「究極超人あ〜る」の直系マンガなんだよなあ。「学生のユートピア」が作中に存在するという点で。

マニアックで、外部から遮断されていながらも、世界最先端に触れることができ、それを共有する仲間がいる。しかも、それだけを考えているだけでよく、余計なことに頭を悩まされることは無い。そういった世界では、「個人」が一際輝いて見える。

現実の大学はそうじゃなかった。しかも、社会に出れば、ますますそんな世界から遠ざかる。遼遠なるキャンパスライフ=ユートピア。しかし、このマンガの中には存在する。読んでいてこんなに嬉しくなるマンガは久しぶりだ。ユートピアから程遠いこのディストピアを「かもして」くれる。名作だな、こりゃ。