片岡篤史の引退

http://www.nikkansports.com/baseball/f-bb-tp0-20061010-102061.html

阪神に来た年は本当に興奮した。
パ・リーグの好打者が我が阪神タイガースにやってくるのだから。

日ハムと言えば、落合でも小笠原でも田中幸雄でもなく、片岡。
松坂大輔のデビュー戦で放った155kmの速球で空振り三振を喫した片岡。
その年、「平成の怪物」を異名をほしいままにした松坂を象徴するVTRとして、シーズンオフもテレビの中で何度も空振りしていた片岡。
でもその1戦後は、実は松坂をカモにしていた片岡。
9回に松坂のノーヒットノーランを阻止したことがある、空気の読めない片岡。

移籍1年目でリーグの違いに戸惑う片岡。
ファンファーレの歌詞が変な片岡。
実は「実家が檜風呂」ではない片岡。
甲子園で「日ハムに帰れ〜」と野次られていた片岡。
がに股と言えば横浜の種田だが、そんなに負けてない片岡。

それでも2003年、優勝決定戦で同点ホームランを放つ片岡。
人気のピークだ片岡。

2004年、プロ入り以来最低の成績だ片岡。

2005年、1500試合出場を達成した片岡。
打率は2割切りそうだ片岡。
金本選手が好きな子どもがその理由を聞かれて答えた一言「右投げ左打ちだからです」。同じく右投げ左打ちの片岡。

2006年、どうしようもない片岡。
今岡不振でお呼びだ片岡。
不振の今岡より使えない片岡。
打率1割を切っていた片岡。

イムリーエラーをする片岡。
チャンスに打てない片岡。
次の日、毎日新聞に「何をしているんだ片岡」と見出しにかかれた片岡。
写真はうつむき加減ばかりの片岡。

2軍にいた片岡。
1軍にあがってきた片岡。
なかなか2軍に落ちない片岡。

使い続ける岡田監督。
ネクストで素振りをしている片岡。
がっかりする観客。
その片岡に全く気付いていなくて、連れてきた子どもに「おい、次は檜山やぞ」と得意げなお父さん。
「代打 片岡」コールが甲子園に鳴り響いて出てきた片岡。
三振する片岡。
「日ハム帰れ」と野次を飛ばされる片岡。
今年で5年目なんですけど片岡。

誰も応援しない片岡。
誰も期待しない片岡。

人から聞かれれば、僕は「片岡ファンです」と答える。金本やシーツは応援しなくても打つだろうけど、片岡は応援しなきゃ打てそうにない。だから応援する。そう答える。半分は嘘だ。そして、半分は本当だ。FAで阪神に入団した時、活躍を信じたのは嘘ではない。ただ、人気球団の選手であると言う過剰なまでのプレッシャーに押しつぶされてしまっただけだ。本当はこんな不甲斐ない成績を残すような選手ではない。今年に入ってからも、口では茶化しながらも、心のどこかでそのことを信じていた。そして、活躍した暁には、「ほら、これが片岡なんや。」そう言いたかった。

どこか他人とは思えない片岡。
駄目なものは駄目だった片岡。
でも、やるしかないということを教えてくれた片岡。
野次られても弱音をはかない片岡。
そして引退だ片岡。

ありがとう、片岡。
さようなら、片岡。
お疲れ様、片岡篤史選手。