二ノ宮知子「のだめカンタービレ(1)〜(15)」

のだめカンタービレ(15) (KC KISS)

のだめカンタービレ(15) (KC KISS)

よめさんが借りてきたので読んでみるとすっかりはまってしまった。このマンガはとても面白い。基本的に、天才指揮者の千秋真一からの視点でストーリーが語られているのだが、その千秋の天才ぶりが非常に分かりやすく描かれているのがよかった。僕はクラシックはずぶの素人なのだが、そんな僕でも千秋のすごさがわかる。それはどういうことかというと、阪神の井川投手のすごさを野球のルールや選手を全く知らない人に対して説明できるのとおなじくらいすごいということだ。そして、その千秋の天才ぶりに輪をかけて天才的なのが「のだめ」。
 15巻も読み終えてみてやっと気づいたのだが、実はこのマンガは天才指揮者千秋の物語ではなく、のだめが主役だったのだということだ。実におかしい。どんどん世界の壁を乗り越え、頂上へ向かって駆け上がっていく千秋に対して、のだめは相変わらずピアノを学び続けている。そして今や雲の上にいる千秋に対して、のだめはまだ山を登り始めたところだ。向上心にあふれ、努力家の千秋に対して、嫌なことからは逃げ、怠惰な生活を送るのだめ。あ、そうか。この少年(青年)漫画の主役をはれそうなスーパースター千秋に主役のオーラを感じてしまうのは、僕が少年(青年)漫画の読者だからか。よめさんは多分違うんだろうな。そう考えるとすごいマンガだ。両者は「天才」という属性を持った登場人物ではあるが、その境遇は違うし、性格や人間性もまるで違うものの、同じように悩み、苦しみ、もがいている。作者は彼らに等しく苦悩を与えているのだ。それは僕達読者に、等しく感情移入をする機会を与えていることになる。
 さらにすばらしいのは、彼らを取り巻く脇役達である。彼らの周囲には変人ばかり集まるが、これは作品を形作る上で必然であるといえる。変人は、悩まない。悩まないからこそ変人である。*1これによって、千秋とのだめの苦悩はより際立ち、ともすれば感情の泥沼に沈みそうになるストーリーを引き戻す。
 とにかく「のだめ」は面白い。ついこんな長文を書いてしまうくらいのめりこんでしまっているのだが、結局なぜ僕がこれほどのだめに入れ込んでいるかというと、ながながと御託を並べておいて恐縮なのだが、のだめがかわいすぎるということだ。こんな魅力的なヒロインはいません。以上。

*1:実際には作中で悩んでいる登場人物は存在するが、大抵1話ぐらいで解決してしまうくらい、あっさりとしたものである。