くるり "言葉にならない、笑顔を見せてくれよ"


今年はこのアルバムを狂ったように聴き続けた。さよならアメリカ〜シャツを洗えばまでの流れが最強。前作からくるりは、ルーツをずっと探して求めていた。今作で、やっと両足をつくことができる土台を見つけることができたのだろう。日本のオルタナティブと呼ばれた世代のトップランナーが、J-Popの世界に切り込んでいってようやく辿り着いた境地。


日本の心に直接触れるようなアプローチ。このアルバムの中に、確かに日本のルーツがある。伝統や文化という手垢にまみれた言葉で表されることのない、日本の歌謡界が半世紀以上にもわたって積み重ねてきたものが、確かに存在している。演歌、歌謡曲、ロック、J-Pop、童謡、民謡、盆踊り。慣れ親しんだ音楽たちを肥料にして、新しい音楽が芽吹きはじめる。ダウンロード全盛の時代、音楽業界はすっかり地ならしされてしまった。だから今、おもしろい。みんなが同じスタートラインに立って、やりたいことができる時代がやってきた。これを歓迎せずにいられるだろうか。