DJ Shadow「The Outsider」

Outsider

Outsider

「ギターを砥石で砥ぐ」

職場の知り合いから借りた。このあいだのサマソニでちらりと見たこともあり、少し興味があったからだ。「ほんますごいんですよ、音がめっちゃやばいんですよ。」と、ブッチャーズ好きの彼が言っていたから、というのもある。

サンプリングやら、マッシュアップやら、ヒップホップなんて門外漢なのでよく知らない。元ネタもほぼ全てわからん。でも、確かにかっこいい。

ギターの音を愛しているのがよくわかる。しかし、例え生音を使用していても、どれだけエッジの鋭いリフを鳴らしても、彼はそれを加工する。まるで、寸分の狂いもなく、刃物を研ぎ上げる砥ぎ師のように、ひとつひとつの音を丹念に研磨している。この辺りのセンスは脱帽もので、何度聴いても耐えうる強度を持たせることに成功している。だから、しつこいくらいに毎日聴いている。その度に、驚きがある。こんなアルバムは、初めてだ。

セットリストもすばらしい。冒頭からギター中心の歌ものロックが並べられ、印象的なアウトロで幕を閉じる#8 Broken Levee Bluesの直後に#9 Artifact (Instrumental)が超高速のハードコアを鳴らす。初めて聴いた時は本当にびっくりした。心臓がどきどきした。どきどきして、やがて高揚した。そして、また滑らかなギターの音が帰ってくる。これは一体何なんだろう。あまりにも異質すぎるトラックは、それゆえに最高なのか。そうではない。その時、静寂や秩序をぶち破る何かが生まれたからだ。このトラックで、アルバム全体が生きてくる。こんなアルバムもまた、初めてだ。